三方五湖のまわりの田んぼ ふゆみずたんぼ

更新日:2022年03月31日

川に集まっている水鳥と黄緑色に広がるふゆみずたんぼ(若狭町向笠)の写真

ふゆみずたんぼ(若狭町向笠)

土壌中の茶色く細長いイトミミズと赤いアカムシ

土壌中のイトミミズとアカムシ

「ふゆみずたんぼ」とは

ふゆみずたんぼとは、冬期に水を張った田んぼのことです。雑草を抑制する効果があるので、無農薬・有機肥料稲作に使用される稲作農法のひとつです。ふゆみずたんぼには、マガンやハクチョウなどの渡り鳥が飛来し、越冬地として利用することがあり、田んぼの自然を再生農法として注目されています。稲の栽培中に、田んぼを良好な状態に保つ生物相の調査や、稲の生育診断を行いながら、なるべく化学肥料や殺菌・殺虫剤を使わないことを目指しています。
また、水鳥が飛来した場合には、フンによるリン酸の施肥効果が確認されているほか、稲の生育期間中の深水管理により、カドミウム吸収を抑制する効果などが確認されています。

ふゆみずたんぼの仕組みと方法(日本雁を保護する会 2006)

(1) トロトロ層づくり

【稲刈り後の土作り】
稲刈り後、切りワラは田んぼにおいたままで排水口を閉めて自然湛水を実施します。
【田植え前30日までに田植えの準備】
発酵肥料100キログラムを散布してドライブハローで浅く耕します。土を平らにならします。畦塗り(高さ30センチメートル)をして、田植えまで水位を5センチメートルに保ちます。田植え前のこれらの作業により、水田にイトミミズなどの微生物が増殖し、地表面にごくやわらかい土の層(トロトロ層)ができます。イトミミズが1平方メートルあたり3000匹以上になると、雑草の生育が抑えられることが確認されています。

(2) 抑草

【田植え前】
イトミミズの数が十分でない場合は、代かき。場合によっては2回代かき。
【田植え後、3日以内に】
コナギ対策のため、米ぬかクズ大豆混合ペレット散布(0~80キログラム)。水深5センチメートルを維持します。
【田植え後、月ごとに】
イトミミズの数やトロトロ層を調査します。
【6月】
ヒエ対策のため、深水管理。中干しは10日間、その後は、稲刈り10日前までかけ流し管理します。
【6~8月】
コナギがでたら、除草します。

(3) 病気・害虫対策

紋枯れ・いもち病対策

【苗作り】
苗は、ビニールハウスで育苗後、箱ごとに水苗代に浸けて成苗を作ります。葉は4~5枚、高さ10センチメートル程度。丈夫な苗を植えます。
【田植え】
坪あたり60株以下で植えます。疎植で、風通しを良くします。
【施肥】
生育診断より、施肥量を判断します。

害虫対策(カメムシ、ウンカ、ニカメイチュウ他)

【草刈り】
カメムシの生息地となる畦畔の草刈りを、6~7月を中心に行います。
【害虫の天敵調査】
天敵となるクモ類、カエル類、ツバメの調査をします。天敵の数が少なければ、必要量だけ農薬を散布します。

(4) カドミウム吸収抑制

カドミウムは、人体に有害な重金属で、河川周辺では土壌に含まれることがあります。カドミウムは、酸性になると土に溶け出し、稲に吸収されてしまいます。一方、酸素が少ない状態(還元状態)になると、稲に吸収されにくくなります。ふゆみずたんぼをすることで、土壌は還元状態になるため、カドミウムの吸収を抑制することができます(ふゆみずたんぼパンフレットより)。

(5) 生物調査「田んぼの生きもの調査」

田んぼの生きもの調査は、抑草に大きく影響するイトミミズや、稲の害虫を食べてくれるクモやカエルなどの益虫など、有機栽培や減農薬・無農薬栽培にとって重要な役割を持つ生き物を対象とした定量的生物調査です。この結果の蓄積により、

  • 生産者自身による抑草対策や肥培管理の診断として使うことができ、
  • 市民による田んぼの生物多様性の豊かさを実感でき、
  • 専門家による生物多様性と営農が共生できる可能性を探ること

が期待されています。調査の実施には、調査指導員による指導を受けることが必要です。

「ふゆみずたんぼ」と水鳥

(1) 水鳥にとってのふゆみずたんぼ

水鳥にとって、ふゆみずたんぼは「えさ場」と「ねぐら」の両方の役割を果たします。ふゆみずたんぼによく飛来するカモ類やハクチョウは、草食でクチバシが平たく、えさを食べるときには、水とえさを同時に口の中に入れて、水だけをはき出します。このため、食事には水が欠かせません。また、水中はキツネなどの外敵から襲われにくい効果もあります。ふゆみずたんぼは、積雪時も水が張ってあるため雪が積もりにくく、2番穂や雑草のタネなど餌も豊富なので、カモにとっては、冬でも安心してえさを食べることができる絶好の場所なのです。

(2) 水鳥による施肥効果

水鳥のフンには、窒素やリン酸などの肥料分が多く含まれています。現在、特に施肥効果が高いとされるリンは、原材料をすべて輸入に頼っています。したがって、ふゆみずたんぼに飛来する水鳥のフンは、持続可能な肥料源としても期待されます。

(3) 水鳥の保護のために

ふゆみずたんぼを利用する水鳥の中には、絶滅の恐れのある渡り鳥も含まれています。コハクチョウ(県域準絶滅危惧)、オオヒシクイ(天然記念物、準絶滅危惧種)、マガン(天然記念物、県域絶滅危惧2種)などです。オオヒシクイやマガンは、若狭町に飛来することはあまりありませんが、将来、町内にふゆみずたんぼが増えたら、飛来数が増える可能性があります。
また、渡り鳥が三方五湖のかわりにふゆみずたんぼを越冬地として利用することで、越冬の拠点が分散化されます。そうすると、渡り鳥が伝染病による被害を受ける可能性が少なくなるほか、麦の食被害の分散化も期待されます。

若狭町内の「ふゆみずたんぼ」

若狭町内では、すでにふゆみずたんぼに取り組んでおられる方もいます。直接ご本人に、ふゆみずたんぼのことを伺ってみました。下の表は、若狭町内で取り組まれているふゆみずたんぼの農法・栽培暦の一覧です。ふゆみずたんぼを実施されている田んぼでは、冬期、カモ類やコハクチョウなどの飛来が確認されています。

ふゆみずたんぼの農法・栽培暦の一覧の表画像

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